「スーパーシティ型国家戦略特別区域」に指定され、先端技術を活用した未来社会の実現を目指す茨城県つくば市。 同市では、規制緩和や新たな技術実証がしやすい環境を活かし、重度障害者など外出困難な方の就労支援に取り組んでいます。
今回は、つくば市役所に分身ロボット「OriHime」を導入した背景にある課題感や、庁舎内での実証実験を通じて見えてきた市民の反応、そして今後の展望についてお話を伺いました。
導入のきっかけは「週10時間未満」の働き方を社会に認めてもらうため
── まず、今回OriHimeを導入することになった背景や、解決したかった課題について教えてください。
一番の大きなきっかけは、つくば市が国から「スーパーシティ型国家戦略特別区域」に指定されたことです。 ここは規制緩和や先端技術の実証実験を通じて、2030年頃に実現される未来社会を先行実現することを目指すエリアです。この環境を活かし、様々な分野の法的な課題を実証実験を通じて解決し、最終的には法改正につなげていくことが、私たちの一つの大きなミッションです。
その中でも特に注力しているのが、障害福祉分野における「超短時間労働者」を取り巻く環境の改善です。


現在、週10時間未満の就労は障害者雇用率の算定対象に含まれず、就労の実態が制度上は十分に反映されていません。そうした部分を少しでも改善したいと考えています。
── 具体的にはどのようなことでしょうか?
現行の制度の狭間で、週10時間未満しか働けないために障害者雇用率の算定に含まれず、就労機会が十分に確保されていない方々がいます。そうした方々に対し、分身ロボットOriHimeを通じて就労の機会をつくっていきたいと考えています。
そして、その実績を積み重ねることで、将来的には週10時間未満の就労者の方も雇用算定に含められるよう、法制度の見直しにつながることを期待しています。今回の導入は、その一歩として位置づけています。
「ロボットなのに、人が話している」その驚きがコミュニケーションを生む
── 実際に導入してみて、どのようなメリットを感じていますか?
一番大きいのは、やはりOriHimeというロボットの「見た目でわかる存在感」だと思います。 他のロボットやツールもあるかもしれませんが、OriHimeは一目でそれと分かり、興味を持ってもらいやすいデザインです。
実際に庁舎に置いていると、特にお子さんや外国人の方が強い興味を持って話しかけてくれることが多いですね。パイロット(操作者)の方も、日々の業務の中でそういった方々とコミュニケーションを取る機会が増えていると感じています。
── 印象に残っているエピソードはありますか?
つい先日のことですが、中南米からの視察団の方がいらっしゃった際、皆さんでOriHimeを取り囲んで話しかけていたことがありました。

ロボットが話しているのに、まさか中に『人』がいて、リアルタイムで会話しているなんて!と、その仕組みにすごく驚かれていました
外国人の方からすると、ロボットそのものよりも「離れた場所にいる人間が働いている」というコンセプト自体が、国内外問わずまだ珍しく、強い関心を持っていただけたのだと思います。
── 来庁された市民の方々からの反応はいかがですか?
やはり、「ロボットが実際に話している」「実際に人が遠隔で操作している」ということへの驚きと、実証実験への関心の声を多くいただいています。「市役所でこんな先進的なことをやっているんだ」「こんなことができるんだね」といった、ポジティブな反応をいただくことが多いですね。

観光案内から混雑緩和まで。職員から挙がった「未来の活用アイデア」
── 職員の皆さんからの反応はいかがでしょうか?
導入当初はシンプルに「可愛い!」「いいね!」という反応が一番大きかったですね。そこから「こういう実証実験をやるんだね」と理解が広まっています。
また、職員向けに「OriHimeをどう活用できるか」というアンケートを取ったところ、庁舎内業務に限らないユニークなアイデアが集まりました。
── どのようなアイデアが出たのでしょうか?
つくば市ならではのアイデアとして、例えば「筑波山の山頂」や、つくば駅近くの「バスターミナル」での活用です。
筑波山であれば、ケーブルカーを待っているお客様の話し相手になったり、混雑時の運行情報をお伝えしたりする。バスターミナルであれば、登山客や観光客へのガイド役として、OriHimeを通じて案内業務を行うといったものです。
また、アイデアの一つとして挙がっていた、表敬訪問者を移動式OriHimeで案内・誘導する業務についても、実際にOriHime Cartを用いて実施しました。

単なる窓口業務だけでなく、こうした訪問者の案内や観光案内、窓口や乗り物の順番をお待ちの方への『おもてなし』の分野でも活用できるんじゃないか、という声が現場から挙がっています
どのような形であれ「働きたい人」の機会を作り続ける
── 最後に、今後の展望について教えてください。
重度障害をお持ちの方など、これまで就労機会がなかなか生まれなかった方々に、いかにして働く場所を提供できることができるか、考え続けていきます。

「スーパーシティ型国家戦略特別区域」に選ばれた『つくば市ならでは』の特徴を生かしながら、就労機会の創出については引き続き取り組んでいきたいと考えています














